犬小屋にネコ

ぐうたら図書館員がおくる猫の話。映画や本の話などもたまに。

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一時期沢木耕太郎がすごく好きだったことがある。
だからといって、著作を全部読んだわけでもなく
ただ、<沢木耕太郎>が好き、というか。
その生き方をうらやんでいただけなのでしょう。
しかし、あまりにもいつまでも清廉な印象を受けるので
ひねくれたわたしは少しずつ離れていってしまったのだけど。

その沢木耕太郎(以下サワピー)の作品を久しぶりに読んだ。
読もう!
と思った理由はひとつ。
先に読み終わった母から
「この本に出てくる人たちの言葉に、
『死のクレバス』よりも凄いかもしれないってセリフがあったよ。」

『死のクレバス』より凄い…
それは絶対読まなくては。

そして読み出したのが『凍』である。


この作品は10年前に書かれた『檀』(檀フミの父と母のお話)と同じように
ノンフィクションともフィクションともつかない。
帯にもこう書いてある。
<もはや、フィクション、ノンフィクションの区別に意味はない。>
登場人物と読者とをサワピーが媒体となってつないでいるといった感じなのか。
まあ、サワピーの作品だから。


世界最高レベルを持つクライマー山野井泰史と妙子夫妻。
ふたりの山に対する姿勢や思いを中心に
どうしてネパールにあるギャチュンカンという山に登ろうと思ったのか
そこにいたるまでの物語と
後半はギャチュンカンとの過酷な闘いを描いている。

読みながら強く思ったのは
ふたりの山に対する強い思い。
山に登ること=生きること
なのだ。
山を中心にしている為、定職にはつかない。
山の宿坊のアルバイトや力仕事をして日々の生活と山の資金を貯める。
彼らの登山スタイルはそんなにお金がかからないらしく
多少援助を受けられても制約ができるほうがいやだと考えているため
自分たちのお金で山に行こうと倹約につぐ倹約生活。

本当につましい生活をしながらも満たされた毎日。

こんなにもストイック何かに打ち込むことができるなんてすごい。
それでいて、本人たちにとってはこれが日常なのだからまいってしまう。

山野井泰史さんは
目の前に素晴らしい壁があり、自分が登ることによって
美しい一本のラインがひかれる
そこにクライミングの楽しさがあると考えているようだ。

読みながら岩壁を光を浴びてよじ登る姿が目に浮かんだ。
(ま、想像でしかないんですが。)

ところで、
山登りといってもいろいろな方法があるようで
よくある遠征隊を組んでいくものは「極地法」「包囲方」とよばれ
大人数で少しずつ頂上に近づき、最終的に体調などをみて
選ばれた人が頂上への登頂をめざす。
それとは逆に
アルパイン・スタイルという方法は、
少数で無酸素で一気に頂上をめざすというもの。
山野井夫妻はアルパイン・スタイルをとっています。

ギャチュンカンからの奇跡ともいえる帰還により
泰史さんは右足の指を全部と両手合わせて5本の指を切断。
妙子さんにいたっては両手の指をすべて付け根から切り落とすことに。

そんな妙子さんの記述にステキな文章が。
昔の登山の時にすでに手足18本の指を切断していた妙子さん。
同じ病院に小指をつめた暴力団員がいて、痛いと大騒ぎしていたところ
看護師さんが
「18本の指をつめても泣き言を言わない女性がいるのになさけない。」
といった発言をしたらしい。
するとしばらくしてその暴力団員が妙子さんの病室に菓子折りをもってきたという。

それくらい、精神力のある女性なんです。

ちなみにお母さんは
「うちの子の指はいつ生えてくるんですか?」って言ったらしい。

指を失って一時は山への思いを断とうとした泰史さんですが
2005年7月19日中国 ポタラ峰北壁の初登頂に成功。
いやはや。
この人たちに比べたら自分の生き様なんてちっぽけなもんです。
ありんこです。

結局『死のクレバス』より凄いのかどうか。
どちらも、寒いし危険だし酸素ないし凍傷だの骨折だの…
わたしにとってはどっちも凄い。
そしてどちらも最後は精神力。
これにつきる。
どちらの人も神頼みをしなかったのだから。

わたしは、サワピーは<『死のクレバス』より凄い>という部分は書かない方が
よかったんじゃないかと思う。
実際会話に出たのだとしても
どうしたって比べてしまう。
やはり比べるべきものではないと思うんだよね。
ただ読んでいるだけの読者は。




凍
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.16
沢木 耕太郎著
新潮社 (2005.9)
通常24時間以内に発送します。

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