「猫鳴り」沼田まほかる
2008.07.30 22:48
![]() | 猫鳴り (2007/08) 沼田 まほかる 商品詳細を見る |
晴れて気持ちのよい休日、家族連れのいる公園、買い物をしているスーパー。
ほんとうになんてことない普段の生活の中で、ふと何かに頭の後ろを引っ張られる。
ふと見れば、こんな日常は彼方に消えて奥へ奥へと引きずりこまれていくかもしれない。
どんな人にだって闇はある。
孤独だってあたりまえ。
誰にだってうまくいかない、どうにもできないことはあるのだ。
それを表に出すか出さないかの違いだけで。
単に「猫」と書いてあるだけが理由で手にした「猫鳴り」は、その気軽さに反して衝撃的な作品だった。
子どもはできないだろうと思っていた夫婦にやっとできた胎児が消え去ったその後。
絶望と孤独にとらわれた少年。老猫をみとる老人の話。
それぞれに生きていくことの寂しさというか、切なさというか。
それとも、怖さなのだろうか。
生きるっていうのは、薄膜に包まれたものなんかじゃなくて、もっと生々しいものをぶつけ合うものなんだと言われているような気がした。
どれも訴えることはあるけれど、動物好きにぐっとくるのはやはり最後の話だろう。
自分ならこんな風にしっかりと看取ることができただろうか。
そしてこんな本を書く、沼田まほかるという人はどうゆう人なんだろうか。
「片眼の猿」道尾秀介
2007.06.27 21:58
サプライズマジシャン道尾秀介の大技小技が冴えわたる!
最後まで作者の意図はわからないだろう!解けないだろう!(みたいな)
新潮社さん、なんだか帯が煽りすぎじゃないですか?
見ためハードボイルドです。
特徴的な耳を持つ三梨(みなし)は盗聴専門の探偵。
現在の仕事は、ある楽器メーカーからのライバル会社スパイ疑惑調査だ。
その調査(盗聴)中に偶然ある女の話を耳にする。
彼女に興味を持った三梨は、自分の事務所に誘うことにしたが・・・。
想像する三梨の耳と同じように読み手にも耳を意識させる文章は考えたな、という感じ。
目で字を追っているのにまるで耳で仕入れた情報のように思えてくるのだ。
個性ある登場人物たちのドタバタも、キャラが立っているという点ではいい。
最初はもっと荒唐無稽なのかと思って、三梨の耳もみんなの謎も期待でいっぱい。
(想像力がないので、猿の耳かと思ってましたが。)
確かに作者の意図に嵌まりましたよ。
でも、半分くらいからなんとなくわかってきてしまい、いや、すべてわかったわけじゃないけれどわかったって思ったら急に冷めてしまった。
そして肝心のミステリー部分がなぁ。
三梨の謎、三梨の元彼女の謎、夏絵の謎、アパート住民みんなの謎、そちらを重視するあまり探偵としての本業があまりにもお粗末ではないですか。
もうひとつのテーマを隠し技としたいのはわかりますが、エンタメでもミステリならばそこはきっちりしていただかないと。
でも、素直な人はきっと楽しめると思います。
若い子だったら考えさせられたりするかもしれない、かな。
道尾作品を初めて読むなら、東京創元社のミステリ・フロンティアから出ている「シャドウ Who’s the shadow?」からがよいかも。「このミス」にも入って評価もいいです。
最後まで作者の意図はわからないだろう!解けないだろう!(みたいな)
新潮社さん、なんだか帯が煽りすぎじゃないですか?
見ためハードボイルドです。
特徴的な耳を持つ三梨(みなし)は盗聴専門の探偵。
現在の仕事は、ある楽器メーカーからのライバル会社スパイ疑惑調査だ。
その調査(盗聴)中に偶然ある女の話を耳にする。
彼女に興味を持った三梨は、自分の事務所に誘うことにしたが・・・。
想像する三梨の耳と同じように読み手にも耳を意識させる文章は考えたな、という感じ。
目で字を追っているのにまるで耳で仕入れた情報のように思えてくるのだ。
個性ある登場人物たちのドタバタも、キャラが立っているという点ではいい。
最初はもっと荒唐無稽なのかと思って、三梨の耳もみんなの謎も期待でいっぱい。
(想像力がないので、猿の耳かと思ってましたが。)
確かに作者の意図に嵌まりましたよ。
でも、半分くらいからなんとなくわかってきてしまい、いや、すべてわかったわけじゃないけれどわかったって思ったら急に冷めてしまった。
そして肝心のミステリー部分がなぁ。
三梨の謎、三梨の元彼女の謎、夏絵の謎、アパート住民みんなの謎、そちらを重視するあまり探偵としての本業があまりにもお粗末ではないですか。
もうひとつのテーマを隠し技としたいのはわかりますが、エンタメでもミステリならばそこはきっちりしていただかないと。
でも、素直な人はきっと楽しめると思います。
若い子だったら考えさせられたりするかもしれない、かな。
道尾 秀介著
新潮社 (2007.2)
ISBN : 4103003324
¥1,680
新潮社 (2007.2)
ISBN : 4103003324
¥1,680
道尾作品を初めて読むなら、東京創元社のミステリ・フロンティアから出ている「シャドウ Who’s the shadow?」からがよいかも。「このミス」にも入って評価もいいです。
「所轄刑事・麻生竜太郎」柴田よしき
2007.05.31 21:56
柴田 よしき著
新潮社 (2007.1)
ISBN : 4104711020
¥1,575
新潮社 (2007.1)
ISBN : 4104711020
¥1,575
柴田よしきのデビュー作の「RIKO 女神の永遠」を読んで、
おおー、こんな警察小説があるんだと驚いたのはもう10年も前のこと。女の刑事が主人公しかもバイセクシャルで不倫もしている。なんだかすごい設定で妖しい話だったけど新鮮で続く「聖母(マドンナ)の深き淵」「月神(ダイアナ)の浅き夢」と読破。
いったいどんな人が書いているんだろうと思っていたら、なんだかおっとりと優しそうな女性でさらに驚いた。
その後はSFやファンタジーなどいろんなジャンルを書いていて、ちょっと恩田陸と似た印象をもっているのだけど、売れているなぁとよく目にしていた割りに読んでいない。
あんまりポンポンと出版されてしまうと追いつけないですよ。
でも今回は、RIKOに出ていた元刑事の探偵麻生さんの刑事時代の話というので、実はあんまり好きな登場人物ではなかったのだけど、(なぜなら明彦さん好きだったんですよ。でも明彦さんって影薄かったよなー。なぜだったんだ?あの頃の自分。)昔に惹かれてってやつですね。
ところが読んでみると、ものごとを深く考えてしまうところとかその考え方に、とても共感の持てる人でした。
まだ若くて刑事としてもまっすぐな彼が、ああいう道に進んでしまうとは。人生とは読めません。
下町の所轄が舞台なので、ドロドロした感じはまったくなく一見さんでも普通に楽しめます。
どうやら時間の流れは「聖なる黒夜」で捜査一課時代、そしてRIKOシリーズという風に流れているようですね。
麻生さんを取り巻く世界はある意味乙女がときめいちゃう世界なんですが。どっぷりいってしまおうかしら。うーん。
麻生&山内は人気があるのはわかるんだけど、ちょっと濃くてねぇ。やっぱり明彦さんが刑事しているのを読みたいですね。「警部・安藤明彦」とか?
「ハゲタカ2」真山仁
2007.05.28 20:26
続編は「バイアウト」という名前だったけど、文庫落ちするにあたって「ハゲタカ2」に改題。
これもドラマの影響か。
確かに同じタイトルの方がわかりやすいしね。
予定通り、せっせと読みましたよ。
ごたごたから逃げ出して放浪生活を送っていたハゲタカ鷲津政彦が日本へ帰ってくると、待っていたのは彼の右腕だったアランの死だった。
事故か他殺か。自分を責める鷲津さん。死の真相を調べるべくまたしてもファンドの世界に戻ってきた。
芝野さんも飯島さんもみんないろいろあって立場も地位も変わっています。
前回はバブル前後の日本の経済状況を踏まえてざっと流れてきたけれど、今回は時代も近づいてライブドアのニッポン放送株の話などリアル世界とのリンクもでてきた。
そして今回のテーマは「堕落論」坂口安吾。
堕落した日本を救うのは、ハゲタカファンドなのか。
いや人間は誰しも堕落する。堕落してそしてどうするか。そのあたりを作者は書きたかったのでしょう。
最終的には日米政府も巻き込んだ壮大な展開になってきて、これはリアルでもありえるのか!私が知らないだけなのか。
まあ小説の中のお話なんですけれど。
最近は新聞の経済面もちらっと(あくまでもちらっとですが)見てみたり。すごい貢献度です。
しかし・・・最後はあれでいいんでしょうか。結局、真相はなんだったのよ?
政彦、もっと調べなさい!
じゃないとアランの死は単なる話の展開上って悲しい真相になってしまうではないですか。
もしかして、またしても続く・・・?
ドラマの「ハゲタカ」が続々と賞をとっています。
第1回ギャラクシー賞マイベストTV賞グランプリ
今年から新設された、視聴者の投票で優れたテレビ番組を選ぶ賞だそうです。
第33回放送文化基金賞のテレビドラマ部門の本賞
そして
出演者賞に「ハゲタカ」などの演技が認められた大森南朋
6月にハイビジョンでの再放送が決まっているそうですが、この勢いで総合での再放送もあるとみた!
見逃した人はぜひ要チェックです。
これもドラマの影響か。
確かに同じタイトルの方がわかりやすいしね。
予定通り、せっせと読みましたよ。
ごたごたから逃げ出して放浪生活を送っていたハゲタカ鷲津政彦が日本へ帰ってくると、待っていたのは彼の右腕だったアランの死だった。
事故か他殺か。自分を責める鷲津さん。死の真相を調べるべくまたしてもファンドの世界に戻ってきた。
芝野さんも飯島さんもみんないろいろあって立場も地位も変わっています。
前回はバブル前後の日本の経済状況を踏まえてざっと流れてきたけれど、今回は時代も近づいてライブドアのニッポン放送株の話などリアル世界とのリンクもでてきた。
そして今回のテーマは「堕落論」坂口安吾。
堕落した日本を救うのは、ハゲタカファンドなのか。
いや人間は誰しも堕落する。堕落してそしてどうするか。そのあたりを作者は書きたかったのでしょう。
最終的には日米政府も巻き込んだ壮大な展開になってきて、これはリアルでもありえるのか!私が知らないだけなのか。
まあ小説の中のお話なんですけれど。
最近は新聞の経済面もちらっと(あくまでもちらっとですが)見てみたり。すごい貢献度です。
しかし・・・最後はあれでいいんでしょうか。結局、真相はなんだったのよ?
政彦、もっと調べなさい!
じゃないとアランの死は単なる話の展開上って悲しい真相になってしまうではないですか。
もしかして、またしても続く・・・?
真山 仁〔著〕
講談社 (2007.3)
ISBN : 4062756870
¥750
講談社 (2007.3)
ISBN : 4062756870
¥750
真山 仁〔著〕
講談社 (2007.3)
ISBN : 4062756897
¥800
講談社 (2007.3)
ISBN : 4062756897
¥800
ドラマの「ハゲタカ」が続々と賞をとっています。
第1回ギャラクシー賞マイベストTV賞グランプリ
今年から新設された、視聴者の投票で優れたテレビ番組を選ぶ賞だそうです。
第33回放送文化基金賞のテレビドラマ部門の本賞
そして
出演者賞に「ハゲタカ」などの演技が認められた大森南朋
6月にハイビジョンでの再放送が決まっているそうですが、この勢いで総合での再放送もあるとみた!
見逃した人はぜひ要チェックです。
「風の影」カルロス・ルイス・サフォン
2007.05.20 17:01
読み始めはなんだか、いしいしんじの書く感じに似ている気がした。
でもさらに進むうちにそれともまた違う。日本にはない広さを感じた。横に広い感じ。
ファンタジーのような世界、不思議な登場人物たち、に包まれたその奥底に眠るものは限りなく現実だ。あえて何かに似ているというならそれは「朗読者」なんじゃないだろうか。
1945年のバルセロナからはじまり1965年にその後の顛末を記して終わるこの物語は「忘れられた本の墓場」からはじまる。
古本屋の息子ダニエルはある日父に連れられて「忘れられた本の墓場」へ行く。そこは世間から消え去る運命にある本が最後に到達する場所。つまりこの世に残った最後の1冊が保管されている。
そして父はこう言う
「はじめてきた人間には決まりがある。どれか1冊本を選んで、その本がこの世から消えないようにずっと守っていかなくちゃいけない。」
ダニエル少年が選んだ本はフリアン・カラックスという人が書いた「風の影」だった。
この作家の本はすべて謎の男によって燃やされてしまうという。いったいどうしてそんなことになったのか、彼の最後の本を守るためにフリアンの過去を調べていくうちにダニエル自身危険に巻き込まれていく。
フリアンの過去とダニエルの現在がシンクロしていくさまは感心するばかり。特に、下巻に入るとパタパタと扉が開くように事実が符合していく。
登場人物がおとぎの世界とも現実ともどちらともいえないギリギリのラインに立っていることで、靄の中のように謎につつまれていくけれど、その奥には人間の残酷さやどうにもできない運命のようなものが詰まっている。
大絶賛だったこの作品をずいぶんと経ってから読んだわけだけど、確かに絶賛されるだけの作品。スペイン文学ってそういえば初めてかもしれない。
でもこれはミステリーではないと思う。「このミス」とかにランクインされているのは謎です。
でもさらに進むうちにそれともまた違う。日本にはない広さを感じた。横に広い感じ。
ファンタジーのような世界、不思議な登場人物たち、に包まれたその奥底に眠るものは限りなく現実だ。あえて何かに似ているというならそれは「朗読者」なんじゃないだろうか。
1945年のバルセロナからはじまり1965年にその後の顛末を記して終わるこの物語は「忘れられた本の墓場」からはじまる。
古本屋の息子ダニエルはある日父に連れられて「忘れられた本の墓場」へ行く。そこは世間から消え去る運命にある本が最後に到達する場所。つまりこの世に残った最後の1冊が保管されている。
そして父はこう言う
「はじめてきた人間には決まりがある。どれか1冊本を選んで、その本がこの世から消えないようにずっと守っていかなくちゃいけない。」
ダニエル少年が選んだ本はフリアン・カラックスという人が書いた「風の影」だった。
この作家の本はすべて謎の男によって燃やされてしまうという。いったいどうしてそんなことになったのか、彼の最後の本を守るためにフリアンの過去を調べていくうちにダニエル自身危険に巻き込まれていく。
フリアンの過去とダニエルの現在がシンクロしていくさまは感心するばかり。特に、下巻に入るとパタパタと扉が開くように事実が符合していく。
登場人物がおとぎの世界とも現実ともどちらともいえないギリギリのラインに立っていることで、靄の中のように謎につつまれていくけれど、その奥には人間の残酷さやどうにもできない運命のようなものが詰まっている。
大絶賛だったこの作品をずいぶんと経ってから読んだわけだけど、確かに絶賛されるだけの作品。スペイン文学ってそういえば初めてかもしれない。
でもこれはミステリーではないと思う。「このミス」とかにランクインされているのは謎です。
カルロス・ルイス・サフォン著 / 木村 裕美訳
集英社 (2006.7)
ISBN : 4087605086
¥780
集英社 (2006.7)
ISBN : 4087605086
¥780
カルロス・ルイス・サフォン著 / 木村 裕美訳
集英社 (2006.7)
ISBN : 4087605094
¥780
集英社 (2006.7)
ISBN : 4087605094
¥780







